窓やドア、造作家具の見積もりは、寸法の聞き取りから始まります。幅と高さが決まらないと、価格を返せないためです。この記事では、幅×高さ×仕様で価格が決まる建材のセミオーダー見積を、Webで自動化する方法を解説します。

先に、書き手の立場を明かします。当社は寸法駆動のWeb見積を設計し、商用サイトで動かしてきた開発会社です。価格ロジックと導入手順の節は、その実務経験にもとづいて厚く書きます。海外SaaSの節は公開情報の調査が中心のため、短めです。

寸法を入れると、カタチと価格が変わります。

Web見積と聞いて思い浮かべる画面は、人によって違います。まず、大きく2つの型に分けて整理します。

ひとつは「プリント型」です。Tシャツやノベルティなど、決まった形に色や柄を載せる商材に向きます。形は変わらず、選択肢を切り替えるだけの方式です。

もうひとつが「寸法駆動型(パラメトリック型)」です。お客様が幅や高さを入力すると、形状と価格が同時に再計算されます。窓・ドア・造作家具は、こちらに該当します。W1200×H2000の引き戸と、W1690×H2135の引き戸は別の商品です。しかし価格は、寸法と仕様から一定のルールで導けます。このルールをWebに載せたものが、寸法駆動のWeb見積です。

プリント型のツールで建材を扱うと、無理が出ます。サイズごとに商品ページを分ける方式では、規格サイズしか売れません。何ページ必要になるかは、後ほど実際に計算します。

建材の価値は、1mm単位で作れることにあります。

見積もりの返事は、なぜ翌日になるのでしょうか。

建材・建具の見積業務は、多くの場合こう進みます。

  • 工務店やお客様から、開口寸法の連絡が届く
  • 規格表と照合し、規格外なら特注価格を計算する
  • ガラス種別・枠色・金物などの仕様を電話で聞き取る
  • 見積書を作成して送付し、変更のたびに再計算する

返事が翌日にずれ込む理由は、2つあります。

第一に、規格外の判断が属人化しやすいためです。「この寸法は対応できるか」「割増はいくらか」に即答できる人が限られます。ベテランが不在の日は、その案件が止まります。

第二に、失注しても工数が返ってこないためです。相見積もりの当て馬でも、計算と書類作成の手間は同じだけかかります。引き合いが増えれば往復も増えます。だから繁忙期ほど返答が遅れ、機会損失が積み上がります。

もうひとつ、受付時間の問題があります。工務店が現場で開口寸法を測るのは、日中とは限りません。夕方以降や休日の問い合わせは、翌営業日まで止まります。Web見積なら、24時間365日その場で概算を返せます。

お客様が寸法と仕様を入力した時点で、仕様は確定データになります。聞き取りが不要になり、1往復目が「確定見積」から始まります。

価格ロジックは、レンジ×マトリクスで作ります。

Web見積にする前に、価格の決まり方を言語化します。多くの建材は、次の3層で整理できます。

  1. 寸法レンジ: 幅と高さを一定の刻みで区切り、基準価格の表を作ります。表の間の寸法は、切り上げで上のレンジに丸めるのが一般的です。
  2. 仕様マトリクス: ガラス種別・枠材・色・金物などの選択肢ごとに、加算額または係数を定めます。
  3. 例外ルール: 最小・最大寸法、対応できない組み合わせ、規格外の割増率を定義します。

この3層で何通りの価格が生まれるか、室内引き戸で実際に数えてみます。対応範囲は幅600〜1800mm・高さ1800〜2400mmと置きます。一般的な室内建具の寸法帯を想定した、仮の数字です。幅を300mm刻みで区切ると4レンジ、高さを200mm刻みで区切ると3レンジになります。基準価格表は4×3で12セルです。仕様はガラス3種・枠色4色・ソフトクローズの有無と置くと、3×4×2で24通りあります。12セル×24通りで、この1商品だけで288通りの価格が存在します。商品ページを分ける方式なら、288ページを作って保守する計算です。

刻みを300mmと置いたのにも理由があります。刻みを細かくするほど価格の精度は上がりますが、セル数が増えて保守が重くなります。刻み幅は、材料取りなどで原価が実際に変わる境目に合わせて決めます。

しかも288は、寸法をレンジに丸めたあとの数です。1mm単位で数えると、幅は1,201通り、高さは601通りあります。掛け合わせると721,801寸法×24仕様で、17,323,224通りになります。電卓を叩いた当社も、この桁には少しひるみました。

一方、計算式で持てば、定義する数字は21個で済みます。基準表の12セルに、ガラスの加算3つ・枠色の加算4つ・金物の加算2つです。17,323,224通りの答えを、21個の数字が返します。

寸法レンジ表ではなく、面積×単価で計算する商材もあります。ガラスやシート材は、こちらの方式が向きます。どちらの方式でも、Webに載せられます。

紙の価格表がすでにある会社なら、この作業の8割は終わっています。

規格表と特注の計算式を、そのままロジックに移せるためです。価格ルールがベテランの頭の中にしかない場合は、この言語化が導入の山場になります。言語化には副産物もあります。担当者ごとに違っていた割増の基準が、社内で1本に揃います。Web見積を導入しない場合でも、この整理は無駄になりません。

3D表示は、本当に必要でしょうか。

正直に書くと、建材のWeb見積に3Dが必須とは限りません。3Dを売る当社が言うのも妙な話ですが、効く場面と不要な場面は分かれます。

3D表示が効くのは、次の場面です。

  • 枠色・面材・ガラスの組み合わせで、見た目の印象が大きく変わる商材
  • 造作家具など、寸法で全体のプロポーションが変わる商材
  • 施主が最終決定者で、完成イメージの合意が受注を決める場合

逆に、不要な場面もあります。

  • 型番と寸法だけで仕様が確定する、プロ向けの部材
  • 相手が工務店で、図面だけで意思決定が完結している場合

後者なら、寸法入力と価格計算だけのフォームで足ります。判断基準はひとつで、「見た目の確認が受注の障害になっているか」だけです。3Dの仕組みと向き不向きは、3Dコンフィギュレーターの解説記事で整理しています。

なお、3Dの有無は後から変えられる設計が安全です。まず寸法入力と価格計算を固め、必要になった商品だけを3D化する順番をおすすめします。

海外SaaSは、寸法オーダーが苦手です。

「3Dで商品をカスタマイズできるSaaS」は、海外に多数あります。しかし建材の寸法オーダーには、構造的に合わないものがほとんどです。

代表例がZakekeです。当社のZakeke調査記事に書いたとおり、Zakekeは静的3Dモデルの切り替えが前提です(2026年7月時点)。寸法から形状を再計算する、パラメトリックのエンジンは持ちません。同じ棚を3サイズ売るなら、3つのモデルを用意する必要があります。前節の288通りをこの方式で用意するのは、現実的ではありません。

これはZakeke固有の欠点ではなく、海外EC向けSaaSに共通する設計です。決まった形の商材を大量に売るECには、静的モデルの切り替えで十分なためです。加えて、管理画面やサポートが英語中心の壁もあります。

寸法駆動に対応する海外製品は、エンタープライズ向けの高額帯に限られます。この価格帯の製品は、当社では検証していません。公開情報の範囲では、導入に数ヶ月かかり、日本語サポートも確認できませんでした(2026年7月時点)。中小の建材メーカーが自力で使える選択肢は、実質的に空白です。

導入は、価格表の棚卸しから始まります。

寸法駆動のWeb見積を導入する手順は、次の5段階です。

  1. 対象商品を1つに絞ります。 引き合いが多く、価格ルールが明確な商品が向きます。
  2. 価格表と仕様の選択肢を棚卸しします。 前述の「寸法レンジ×仕様マトリクス」の形に整理します。
  3. 規格外の扱いを線引きします。 どこまで自動計算で返すかを決めます。範囲外は「担当者からご連絡します」に切り替える設計が現実的です。
  4. 貴社サイトとの連携方法を確認します。 制作会社側が接続まで請け負う方式なら、サイトの改修は不要です。
  5. 見積データの受け皿を決めます。 まずはメール受信で始め、軌道に乗ったら販売管理システムへの連携に広げます。

費用感は、自作・SaaS・受託開発のどれを選ぶかで変わります。相場の全体像は、見積もりシミュレーターの費用記事にまとめました。

最初の1商品が動けば、規格外の問い合わせが何件減ったかを数えられます。数字が出れば、2商品目に広げる判断は社内で自然に進みます。

貴社の価格表は、いま紙の上と、ベテランの頭の中のどちらにあるでしょうか。紙に書き出せるなら、Web見積までの残りの距離は21個の数字ぶんです。